― 市場実績と技術的裏付けから、PMを適正化する
⑲では、目標Up Timeを実現するために、
PM・MTTR・MTBFへ改善バジェットを割り振り、それぞれの目標値を設定する考え方をご紹介しました。
目標値が決まれば、次にやることは明確です。
現状値と目標値のGapを、どう埋めるか。
まず、PM(Preventive Maintenance:予防保全)から考えてみます。
■ Up Time改善では、PMが大きな改善ポイントになる
Up Timeが90%を超えるような装置では、PMによる計画停止時間は、特に重要な改善ポイントになります。
もちろん、
MTTRを短縮する。
MTBFを伸ばす。
ことも重要です。
しかし、故障頻度や故障後の修復時間を短期間でドラスティックに改善することは容易ではありません。
一方、PMはあらかじめ決められた計画停止です。
そこでまず、PMのどこに改善余地があるのかを具体的に分析します。
■ PMをアイテムごとに分解する
PMのGapを埋めるためには、PM全体の時間だけを見ていても改善策は見えてきません。
実際のPM項目を一つひとつ洗い出します。
例えば、
LMガイドのグリスアップ
3か月 → 半年、あるいは1年へ延長できないか。
ベルトテンション確認
3か月 → 半年、あるいは1年へ延長できないか。
定期クリーニング
1か月 → 3か月へ延長できないか。
というように、何を行っているのか。どの周期で行っているのか。1回にどれだけ時間がかかっているのか。
を具体的に見ていきます。
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■ 市場実績から「本当にこの周期が必要か」を考える
PM周期は、単純に短くすれば安全というものではありません。
一方で、
「従来から3か月だから、3か月」
というだけでは、適正な周期とは言えません。
ここで重要になるのが、市場実績です。
実際の市場では、さまざまな事情によって、規定された周期どおりにPMが実施されていない場合もあります。
それでも、装置が長期間安定して稼働しているケースがあります。
これは、「PMをやらなくてもよい」という意味ではありません。
むしろ、
「規定は3か月だが、実際にはそれ以上の期間でも問題なく稼働している。では、本当に3か月周期が必要なのか?」
という仮説を持つための重要な市場実績です。
■ 市場実績だけで決めず、技術的に裏付ける
もちろん、市場で問題が起きていないという事実だけでPM周期を変更するわけにはいきません。
そこで、技術側からも検証します。
例えば、
耐久試験を行う。
部品寿命を確認する。
摩耗や劣化状態を確認する。
実際の使用条件を考慮する。
こうした技術的な裏付けによって、周期を延長しても問題がないことを確認します。
つまり、
市場実績から仮説を持つ→技術・耐久試験で裏付ける→ PM周期を適正化する
という進め方です。
例えば3か月周期だったPMを1年周期へ変更できれば、
年間4回 → 年間1回となります。
1回の作業時間を変えなくても、そのPM項目による年間停止時間は75%削減できます。
このような改善を各PMアイテムについて積み上げ、⑲で設定したPM目標とのGapを埋めていきます。
■ サービス部門を「当事者」にする
この活動では、サービス部門の役割も重要です。
市場のPM実態を最もよく知っているのは、実際に装置を保守しているサービス部門だからです。
一方で、従来設定されているPM条件には、安全側に設定されたマージンもあります。
サービスする立場からすれば、自らそのマージンを縮めることには慎重になるのも当然です。
だからこそ、サービス部門を単なる情報提供者ではなく、Up Time目標を達成する当事者
として開発プロジェクトに参画してもらうことが重要です。
目標PMが設定されれば、
「従来からこの周期だから」では終われません。
市場実績を確認し、本当に必要なのか。どこまで周期を延長できるのか。どこに改善余地があるのか。
を自ら考える必要が出てきます。
そして、技術部門が技術的な成立性を確認する。
サービス部門の市場実績 × 技術部門の技術判断
によって、PMのGapを具体的に埋めていきます。
■ PMを減らすのではなく、適正化する
重要なのは、
「Up Timeを上げるためにPMを減らせばよい」
ということではありません。
必要なPMまで削れば、故障が増え、MTBFを悪化させる可能性があります。
目的は、PM削減ではなくPMの適正化です。
その基本的な流れは、
PMの現状値と目標値を確認する
PMアイテムを分析する
↓
市場実績から改善可能性を探る
技術・耐久試験で裏付ける
↓
PM条件を適正化する
↓
目標とのGapを埋める というものです。
市場で得た事実を技術で検証し、次の装置開発へ反映する。
これも、Up Timeを開発段階から作り込むフロントローディングです。
次回は、MTTRについて、同じように現状と目標のGapから、どこに改善すべき課題があるのかを考えていきます。
金言>PM改善は、単に作業を速くすることではない。
市場実績で問い直し、技術で裏付け、必要なPMへ適正化する。