~製造もQCD目標を持ち、開発の当事者になる~
「製造部門も開発初期からプロジェクトに参画しています」
このような会社は少なくありません。
その参画は、本当に製造のフロントローディングになっているでしょうか。
開発レビューに参加して、
「今度はこのような製品を開発するのか」
と情報を把握する。
具体的な設計段階になると、CADを見ながら、
「ここは組立が難しい」
「工具が入りにくい」
「ケーブルルートが狭い」
といった製造上の問題を指摘する。
設計が進めば、組立図をもとに工程を分割し、治工具や作業手順などの製造準備を進める。
もちろん、設計が完成してから初めて製造部門が関与するより、一歩進んだ取り組みです。
しかし、これだけで本当に製造のフロントローディングと言えるでしょうか。
設計されたものに対して問題点を指摘し、設計されたものをどう作るかを考えているだけでは、製造部門はまだ開発のフォロワーです。
製造もQCD目標値を持つ
製造部門が開発の当事者になるために、まず必要なのは、
製造としてQCD(品質・コスト・納期)の具体的な目標値を持つことです。
「もっと作りやすくしてほしい」という定性的な要望だけでは、具体的な改善にはつながりません。
例えば、
•組立時間 ○%短縮
•製造コスト ○%削減
•製造不良率 ○%改善
など、目指す姿を数値として明確にします。 では、その目標値をどのように設定し、実現していくのでしょうか。
1) 現状を把握する
最初に行うのは、現状把握です。
現在の製品について、品質・コスト・工期の実態を数値で把握します。
そして、「現在、何が問題になっているのか」を明確にします。
現状が分からなければ、適切な目標値も改善策も設定できません。
2) 目標値を設定する
現状を把握したうえで、次の製品で達成すべきQCD目標を設定します。
例えば、現行製品の組立に20日かかっているのであれば、
次機種では組立期間を15日にする。
といった具体的な目標を設定します。
ここで初めて 現状と目標のギャップが明確になります。
3) 目標達成を阻害しているものを探す
次に考えるのは、
なぜ現在の状態になっているのか。
何が目標達成を阻害しているのか。です。
組立時間が長いのであれば、どの工程に時間がかかっているのか。
順番にしか組み立てられない構造になっていないか。
調整に時間がかかっていないか。
長納期部品が全体工期を支配していないか。など、ボトルネックを明確にします。
4) 改善コンセプトを考える
ボトルネックが分かれば、「では、どうすれば改善できるのか」を考えます。
改善コンセプトとは、目標達成のための基本的な考え方です。
例えば、
「ユニット単位で独立して組み立てられる構造にする」
「複数ユニットを並行して製作する」
「長納期部品に依存しない構成にする」 など、目標を達成するための基本的な考え方を作ります。
5) 開発・設計へ具体的な要求を出す
そして、その改善コンセプトを開発段階から設計へ織り込みます。
単に、「ここは組みにくいので改善してください」ではありません。
「製造工期○%短縮という目標を達成するため、このユニットは独立して組み立てられる構造にしたい」
というように、QCD目標と、その達成に必要な具体的要求をセットで設計へ提示します。
ここまでできれば、製造部門は設計されたものを受け取るだけのフォロワーではありません。
製造の専門家として、開発へ具体的なインプットを出す開発の当事者になります。
「1発で仕留める」製造立ち上げへ
試作してから製造上の問題を見つける。
設計へフィードバックする。
設計変更して、もう一度作って確認する。
このサイクルを何度も繰り返せば、品質立ち上げにも時間がかかります。
製造側が開発初期からQCD目標を持ち、問題となる要因を先読みし、設計へ織り込んでいけば、この改善サイクルを減らすことができます。
目指すのは、「1発で仕留める」製造立ち上げです。 これが、製造におけるフロントローディングの狙いです。
この考え方の本質は、営業・開発・製造に共通する思考プロセスです。
現状を把握する。
目標を設定する。
目標達成を阻害する要因を見つける。
改善コンセプトを考える。
具体的な要求・行動へ落とし込む。
営業戦略でも、製品開発でも、製造改善でも、基本となる思考プロセスは同じです。
担当する仕事が違っても、目標から逆算して考え、具体的な行動へ落とし込むことが重要なのです。
まとめ
製造のフロントローディングとは、単に開発レビューへ早く参加することでも、製造準備を早く始めることでもありません。
製造自身がQCD目標を持ち、現状とのギャップを分析し、改善コンセプトを作り、その要求を開発段階から設計へ織り込むことです。
そうすることで、製造部門は開発のフォロワーから、開発の当事者へ変わります。
金言>「製造は開発のフォロワーではない。QCD目標を持ち、製品を共につくる開発の当事者である。」